東京のダムカレー
DPZの記事で、萩原雅紀さんが書く『スイスのダムめぐり』という記事がここ最近とても印象に残っている。日本で一番高い黒部ダムより高いダムの写真が、ごろごろと出てくるのだ。そしてダムの周囲に広がる広大な景色がキレイなこと!ダム好きならずとも、行ってみたいなーと思うだろう。実際僕自身そこまでダムに興味がなかったのだがスイスの記事を読んでからは俄然ダムに興味が出始めた。
そして読みながら、ふと思う。
この貯めてある水が他のものだったらおもしろそうだなぁ…
例えば僕が好きなりんごジュースだったら、もっとダムが好きになるかもしれない…
と変なことを考えていた。
しかしこの考えが現実になった、ダムが身近に感じられる情報を入手。
貯水の部分がカレーのルー、コンクリートの部分がごはんという、『ダムカレー』と呼ばれるものが東京にあるというのだ。
ダムカレーというと、黒部ダムカレーとよばれるものが有名らしい。黒部ダム周辺の飲食店で出されているカレーで、黒部ダムのかたちを模しているだそうだ。
量や具など、店それぞれの味があって制覇してみるのも楽しそう。
http://kurobedam-curry.com/
黒部ダムは長野県にあり、興味があっても都心にお住まいの人はなかなか気軽に食べることができない。しかし調べてみると、そんなダムカレーが東京で食べれることがわかった。
東京なら行けるぞ。カレーには目がない僕。百聞は一見にしかずってなわけで、さっそく行ってみることに。
錦糸町駅にやってきました
調べてみると、錦糸町には横浜から横須賀線1本と好アクセス。
しかし当日、電車に乗っていたら横須賀線は遅れているとアナウンスで言われ、途中で乗り換えて何とか錦糸町に到着。
この出来事が何か嫌なことを予兆しているようで、もしかしたら行こうとしているお店が休みだったらどうしようとか、急に不安になった。下調べは充分してきたつもりだったので、まぁ大丈夫と思っていたのだが、その予感は少なからず当たっていたのだった。その詳細は後述に。
とりあえず歩きます
錦糸町は初めて来たんですが、葛飾北斎の生誕の地みたいですね
北斎通りとよばれる通りにあった柱には北斎の絵がありました
錦糸町駅の北口を降りて、浅草方面に歩くこと数十分。目的地に到着。
こちらです
「Japanese Restaurant 三州家」です。ちなみにここは併設されているレストランで、本店は創業明治22年の老舗割烹料理店。
併設されているレストランの裏路地にある本店
本店は趣がある門構えで、僕のような若者には入りずらい。これを見てしまうと、本当にここで一見遊び心あふれたダムカレーなるものを提供しているのだろうか不安になる。
そういえば下調べによると、ダムカレーは通常のメニューに載っていないいわゆる裏メニューというのを忘れていた。
一見さんが裏メニューを頼んでいいものなのだろうか。僕の不安をさらに加速させる。
突入
店員さん「いらっしゃいませー。(辺りを見回し)こちらのほうにお座りくださーい」
席に座る僕。繁忙時も過ぎた夕方だったからか、好きな席に着けた。
そして店員のおばちゃんが水とおしぼりとメニューを持ってきてくれる。
メニューを見てみると、やはり通常版メニューにダムカレーの詳細はない。恐る恐る聞いてみることに。
「あのー。なんかダムのカレーがあるっていうのを伺ったんですが…」
店員さん「あら、ダムカレーね。ちょっと待ってね」
お、すんなり要望が通った。おばちゃんの対応も手慣れたものだった。
噂を聞きつけたダムマニアな人がしょっちゅう訪れるのだろうか。店員のおばちゃんも人あたりがよくてちょっと一安心。
店員さん「ごめんね、ちょっと今でかけちゃってていないみたいなのよ。1時間ぐらいで戻ってくるらしいから、もしよければまたその頃にでも来てくださらないかしら」
「というと、ダムカレーつくれるのは、お一人しかいないんですか?」
店員さん「そうなのよ。やっぱり提案したミヤジマさんしか作れなくてねぇ。いろいろ仕組みというかつくり方は教えてくれるんだけど、やっぱり真似できなくて」
会話に出てくる、ミヤジマさんがダムカレーの考案者の宮島咲さん。ダムマニアというサイトの管理人でもある。
店員さん「ダムカレーはどこで知ったの?」
「ネットで知りまして…、実は私ライター業をやっておりまして(見栄はりました)ブログで書きたいなぁと思って訪れました」
店員さん「あら、じゃあわざわざ来てくれたのね。さっきも九州から来た女性が来て、近くに来たから立ち寄ってくれたみたいで今のような話をしたところなのよ。」
「おおーそんなことがあったんですか」
店員さん「なら、せっかくだから食べていかなきゃだわね」
「そうなんですよ。では、また1時間後伺いますね」
電車に乗っていて感じた嫌な予感はこんなかたちになって現れた。でも1時間後にまた行けば食べることができる。適当に時間をつぶして再度訪れることに。
しかし、まわりは閑静な住宅街でぶらぶらできるようなお店がなかった。あまり遠くに行ったり錦糸町駅まで戻ると1時間でお店に戻ってこれないと思い、歩いて数分の地下鉄の駅前の喫茶店に入ることに。
この日、あまり食事をとっていなかったのでとても腹が減っていた。カレーを食べるまでもたない感じだったので、入った喫茶店でホットケーキを注文してみたらそれがとてもおいしかった。
シロップが自分の好みで調節できるところが良い
気を取り直して再度突入
喫茶店で1時間過ごし、店に戻る。あたりはすっかり暗くなってきて、秋風が心地よい。
今度こそ食べますよ
店員さん「いらっしゃいませー。あら、おかえりなさい。こちらにどうぞ」
先ほど対応してくれたおばちゃんだ。おかえりなさいと言われて少し心がなごんだ。
店員さん「ごめんなさいね待たせちゃって。はい、こちらがダムカレーのメニュー」
ダムカレーメニュー
なんとメニューには4種類ものダムカレーが。写真と共にダムカレーの説明が載っていて、ダムによってご飯の量が違うようだ。
メニューにはすでに写真見本があった。どれもほんとにダムっぽい。
「人気があるのはどれなんですか?」
店員さん「そうねぇ、アーチ式ってやつがよく注文受けるかしら」
アップでどうぞ。アース、アーチ式
重力式、ライスフィル
店員さん「そうそう、あと今こんなのもやってるのよ」
裏を見ると今話題のダムの名が
「え(笑)これはどんなかたちで出てくるんですか?」
店員さん「でもこれってまだ完成してないじゃない?お味噌汁とどんぶりに福神漬けがあるだけで、ご飯もカレーもないのよ。ジョークでつくったものだから頼まれたら困るんだけどね(笑)まぁこんなのもあるわよっていうだけ。しかも中止になってるっていう話だから…この先どうなるかしらね。」
この260円という値段設定はどこからきているのかわからないが、タイムリーな話題も見逃さない、割烹料理店 三州家。
「じゃあ、この人気のアーチ式をお願いします」
店員さん「はーい。戻ってきたばっかですぐ出てこないかもだけど、待っててね」
いよいよです
緊張な面持ちで待つ僕
待つこと数分。
店員さん「はーい、お待ちどうさまー」
墨田区にダム現る
メニューにあった写真ですでにばれてしまっていたが、いざ目の前にすると笑みがこぼれる。
器にどんぶりを使っているためか、黒部ダムカレーよりも貯水の部分のイメージがしやすい。
この堤体の反り具合ったらなんとまぁ!
福神漬けは洪水吐をイメージしているらしい
※洪水吐…水量調節のために、ダムの水を下流に放流する設備
DVDの宣伝チラシもお盆に乗ってました。絶賛発売中だそうですよ
黒部ダムカレーとはまた違った味をかもしだしていてコンクリートご飯の見た目のインパクトは絶大。そしてあふれんばかりのカレー。まさに夢のようなダムがここに見参。
何枚か写真を撮り終え、いよいよ食べるわけなのだが、その前にやらなければならないことがある。そう、ダムの魅力のひとつでもある放流だ。カレーがあふれる前に早くゲートをオープンしないと!(実際あふれることはありません)
堤体に割り箸で穴を開けていざ放流!
…
カレーに粘着性があってまったく流れなかった。
もっとサラサラしたカレーなら流れたかもしれないが、あまりサラサラしてるとご飯に染み込んでダムが壊れてしまうので、このくらいがちょうどいいのかもしれない。
というわけで計画変更。決壊!
そして気になるお味のほうは
おいしい!
具は牛肉などが入ったビーフカレー。和風な味で、パクパク食べれる。さすが割烹料理店が併設されているレストラン。つけあわせのお味噌汁も、ネギ、豆腐、なめこが入った優しいお味。
なるべく崩さないように食べていたのだが、段々とご飯が傾く。まさに怪獣になってダムを壊している気分だ。
このコンクリート部分は、どんぶりにご飯よそったら、2つのシャモジですばやく締めて固めて施工しているそう。固めているといってもガチガチにではなく、食べやすいよう程よくまとまっている。似た感覚でいうとおにぎりのような感じだ。考案者の宮島さんしかつくれないという話も納得。
おいしゅうございました
食べ終わると同時におばちゃんが水をそそぎに来てくれた。
店員さん「いかがでした?」
「美味しかったです。ちなみにこれっていつ頃から出すようになったんですか?」
店員さん「3年前ぐらいからかしら。テレビとかで紹介されて人気が出て提供するようになったわ。あれなの?あなたもやっぱりダム好きなの?」
「田舎が千葉の房総のほうなんですけど、帰るときにダムの近く通るんでそれで身近に感じるというか、気にはなっているっていう感じですね(この時は名前が出てこなくて、帰って調べたら亀山ダムでした)」
店員さん「あぁあるわよねダム。ダムも不思議なものよねぇ。あれが作られるために町や自然がつぶれちゃうわけだから。でもわたしたちの暮らしや安全にはなくてはならないものでしょ?だから八ツ場ダムの問題も大変よね」
確かになぁと思った。
そんなことを思ったことない僕としては、おばちゃんとの話は新鮮でいろいろと考えてしまった。宮島さんにも話を聞いてみたいと思ったのだが、厨房からはなかなか姿を現さない感じで、1時間程待って食べ終わった頃にはすっかり夕食時となってしまったため忙しいっぽい様子だったので、またの機会にすることに。いつかお話してみたい。
店員さん「ありがとうございましたー。待たせちゃって悪かったねぇ。またよろしくね」
「いえいえ、ごちそう様でした」
好きなカレーも食べれたし、いろんな話も聞けて満足満足。
お近くを寄った際にはぜひ三州家のダムカレーをどうぞ。
食ったどーーー
今回行ったお店
Japanese Restaurant 三州家
http://www.sansyu-ya.co.jp/rst/
END
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コメント
ご来店どうもありがとうございました。
1時間もお待たせしたなんて、本当に申し訳ございませんでした。
楽しくレポートを拝見させていただきました。
美味しく召し上がって下さったとの事で何よりです。
ご実家付近にある亀山ダムは、年に2回ほど観光放流をします。
今年は多分、11月に実施されると思います。
よろしければ見学されてみてはいかがでしょうか?
今後ともよろしくお願いいたします♪
投稿: 宮島 | 2009年10月14日 (水) 16時31分
>>宮島さん
なんと、ご本人からコメントいただけるとは。恐縮です。
いえいえ、こちらも突然でお電話など差し上げなくて申し訳ありませんでした。カレー美味しかったです!
亀山ダムと同時に、片倉ダムもよく見かけます。宮島さんの『ダムマニア』で調べてみたら、この辺りにはダムがいくつか点在しているんですね。
放流情報ありがとうございます。また何か機会ありましたら、その際はよろしくお願いいたします!
投稿: テレしん | 2009年10月15日 (木) 14時23分